映画ログ2




 「劇場版 トップをねらえ!」(2006)
監督/庵野秀明

 OVAを是非、としか……。

■ 人類が宇宙へと進出するようになった時代、地球は宇宙怪物による激しい攻撃を受けていた。宇宙怪物との戦いで戦死した総督の娘である主人公タカヤ・ノリコは沖縄のパイロット養成学校に通い軍人を目指していた……。
 ガイナックスの初期作品「トップをねらえ!」(1988年作品、OVA、全6話)を劇場用に再編集したもの。なので要するに30分×6=3時間の作品を、劇場用に短縮してまとめてあるのだ。かといって映画にしたからどうというわけではなく、見やすくなっているかと聞かれてもそうでもなく、寧ろ短縮しそぎ落とした部分があることによって補完しないといけない部分がたくさんあり(ユングがいつの間にか登場しているとか、最初のお姉さまとノリコの距離感がイマイチ描けてないとか)、その辺でちょっとまてーと思う部分がたくさん。先にOVAを見たからそう思ったのかな? でも1時間40分で、ほとんどが4話〜6話に使われているので、最初が結構ざっくり削られているのですよ。OVAを先に見た方は、この劇場版は特に見なくていいと思います。そして劇場版を見た方は、ぜひOVA版を見ていただきたいと思います。



 「ブラック・スワン」/(2011)
監督/ダーレン・アロノフスキー

 

■ ニューヨークの一流バレエ団に所属するニナは、全ての生活をバレエに捧げてきた。その中でプリマの引退に伴い、新解釈の「白鳥の湖」の白鳥の女王役に抜擢される。しかし生真面目で気弱なニナは、白鳥を演じることはできても官能の象徴である黒鳥をなかなか演じることができない。極度のプレッシャーの中で彼女は幻覚を見るようになり……。
 「白鳥の女王ってなんだよ」とか(白鳥にされたオデットは村娘)、「舞台装置が適当」だとか、バレエに関する突っ込みはちょっとありますが、あんまり大した問題じゃありません。そういうことよりも、追い詰められていくニナを見ているこっちが不安になっていく映画でもあります。こんなスリラーで、まさか妄想上の百合プレイを見るとは思わなかったぞ。痛そうなシーンがたくさんあるので、苦手な人は注意したほうがいいのかも。そんなこの映画ですが、個人的には結構好きです。私は痛いのと百合がダメな人には薦めませんが、大丈夫だったら是非見て頂きたい。勿論、ナタリー・ポートマンの役作りは、私ごときが文句をつけるのはおこがましいというものでしょう。






 「劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを往く者」(2005)
監督/水島精二

 1期アニメを通して、原作ファンは「これはこれ、あれはあれ」と思えるかが鍵。

■ 1931年、ドイツの首都ベルリン。そこに右手左足が義足の青年がいた。彼はエドワード・エルリック。彼は「扉の向こう側」の世界から来た人間で、元の世界の戻り方を探していた……。
 賛否両論起こったアニメ「鋼の錬金術師」第1期の劇場版で完結編。お話の筋は長いのでぐぐったりして確認してください。アニメからの続編になっているので、第1期アニメ全52話の内容を抑えてから観るのが第一条件。原作漫画と04年版はほぼ別物と考えて頂いた方がよろしいです。個人的に04年に放送された「鋼の錬金術師」は、ウィンリィのおざなり感と主人公エドワードの性格が何よりも私は駄目でした。この劇場版で「ウィンリィはどうするんだよ!」とエドワードに聞いたアルフォンスの言葉は、私の気持ちの代弁でした。エドは少年漫画の王道を行く「泥臭さ」を持っていると思うので、そこがないと個人的には「エドがエドじゃない!」と思ってしまうのです。04アニメから入った人間は、逆に原作をどう思うのだろう。原作から入った人間は「これはこれ、あれはあれ」と思いながら見ないと楽しめないんじゃないかなと思います。私はちょっと無理でした。ただし主題歌は、04アニメのほうが好きですけれど。なんだか04年の第1期アニメの文句みたいになってしまったけれど、私にとってのこの映画は、「辛さ」が勝っていました。そんなわけで完結編としてのこの映画の評価も辛めです。劇場版でのあんな諦観のあるエドワード・エルリックは見たくないっす!






「スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団」(2010)
監督/エドガー・ライト

何コレチョーオモシロス。ファミコンで育った人は確実に楽しめる作品。

■カナダのトロントに住むオタクで売れないバンドマンのスコット・ピルグリム(無職)は、夢で出会ったラモーナという少女に一目ぼれ。だが、ラモーナの彼氏になるためには、彼女の7人の邪悪な元カレたちを倒さなくてはならなくなり……。
 「UNIVERSAL」の文字とともに流れる電子音から期待が高まる。とにかくテンションやテンポがコミック的でありゲーム的。キャラクターもキャラクターの配置もいちいち魅力的で、特にスコットの同居人ウォレス(キーラン・カルキン)の役柄と、ラモーナ(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)の「オタクの琴線に触れそうな感じ」がいいと思いました。何故スコットが強いのか、そして邪悪な元カレは何故超現実的な力を持っているのか、そんなもんなくっていいんです。理屈なんてなくっていいんです。ラモーナとスコットの恋の行方は? 邪悪な元カレ軍団との戦いは? そもそも何故邪悪な元カレ軍団って結成されたの? 全てが面白く見れる作品で、特にファミコン世代以降が見たらかなり楽しめる作品だと思います。
 ていうか、個人的に大好きな作品です。





「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」(2011)
監督/スティーブン・スピルバーグ

ストーリーよりも演出と映像が素晴らしい。見る際は是非字幕版で。

■ある日、蚤の市で少年記者のタンタンはかつて海に沈んだというユニコーン号のレプリカを購入する。そこからタンタンの冒険が始まった……。
 ベルギーの作家エルジェのバンド・デシネ「タンタンの冒険旅行」の中の「金のはさみのカニ」「なぞのユニコーン号」「レッド・ラッカムの財宝」をベースにした映画。原作を知らずに見に行った人間ですが、映像の情報量がとにかく多く、かつめちゃくちゃすごいとしか言いようがないです。更に随所に凝った演出やキャラクター同士のやりとりが楽しい作品でした。私は主人公タンタンが「少年版インディ・ジョーンズ」+「少年版ジョン・マクレーン」と感じましたね(タンタンは数回死んでてもおかしくないよねぇ)。ストーリーもサクサク進んでいったので、ですがここが評価の分かれ目なのかな。私はテンポがよかったので結構好きです。なお私は、吹き替え版よりも断然字幕版をお勧めします。浪川大輔は嫌いじゃないが、どうも緊張感が欠けてしまっていたのでね!




 「真珠の耳飾りの少女」(2003)
監督/ピーター・ウェーバー

フェルメールの絵画のような色彩を持つ映画。

■17世紀のオランダのデルフト。15歳の少女グリードは父親が失明したため稼ぎに出される。その奉公先が画家のヨハネス・フェルメールの自宅だった。仕事をしているうちに色彩に関する才能を見せていくグリードと、その才能に気付いていくフェルメール。互いに意識していく二人だが……。
 ヨハネス・フェルメールの有名な絵画「真珠の耳飾りの少女」(青いターバンの少女ともいう)を題材にした映画。映画の色彩は何となくフェルメールに似ているなーと感じ、またターバンを被った時のスカーレット・ヨハンソンは、確かに肖像画の少女に結構似ているのでこの辺のキャスティングはよいと思いました。で、その有名絵画を題材にした映画はどんな感じかというと、綺麗な使用人(真珠の耳飾りの少女)が主人(フェルメール)に気に入られて奥さんに嫉妬されてそのうちの子供にもイヤガラセされる話です。パトロンにも手を出されそうになってたよね。絵画が生まれるまでの過程になかなかに生々しい事情がたくさん入れられて、さらにそれだけしかドラマがないといえばないので、ちょっとうんざりする人もいたりするのかな。日本だと恋愛映画とされているようですが……。




 「SRサイタマノラッパー」(2009)
監督/入江悠

全ての人に、届けこのライム!

■レコード屋もライブハウスもない埼玉県のフクヤ市に住むニートのIKKUは、日々無為な生活をしながら世界的ラッパーを夢見ていた。そのために、友人のTOMやMIGHTYとまずフクヤ市でライブを行おうと計画していた。そんなある日、高校の同級生だった千夏が帰ってきて……。
 ゼロ世代の最後の年にドロップアウトされたインディペンデント映画であり、代表作。主人公のIKKUやTOMなどのくすぶっている若者を見て、ワタクシのように「あんたは俺か!」と思う人は多いはず。個人的には「夢じゃ飯は食えない」ことと「夢を選んだ時の尊さ」を表現し、見事に描いている作品でもあると思います。中盤のラップシーンで、主人公たちと一緒に気まずくなって居たたまれなくなった人も多いんじゃないかな。だからこそと言えるかもしれません。ラスト前で少しでもこの映画に共感した人には、最後の5分でありえないぐらいの感動が待っているかもです。



 「トムとトーマス」(2000)
監督/エスメ・ラマーズ

 舞台がロンドンで可愛い双子でファンタジー? 興味が無いわけがない。
■クリスマス間近のロンドン。売れない画家の父親と暮らす9歳のトーマスは、時折「トム」という養護施設で過ごす少年の夢を見る。夢の中の「トム」とトーマスは繋がっており、「トム」の痛みはトーマスに伝わってくることもあった。その数日後、誕生日に宇宙博物館に連れていってもらったトーマスは、博物館内の鏡の間で、自分と同じ顔の少年と出会う。互いに驚く二人。その少年こそ、トーマスの夢に現れていたトムだった。
 悪役という印象の強いショーン・ビーンがパパ役というのも注目ですが、とにかくトムとトーマスの二役を演じ切った子役のアーロン・ジョンソンが天使の様で超可愛い。睫毛が長く、目がぱっちりしていて、本当に「こんな可愛い子が女の子の筈がない」を見事体現してくれている。双子の演じ分けも見事でした。日本では未公開だったらしいけれど、何故これを劇場公開にしなかったのだろうと不思議な気分になっている。人身売買というヘビーな部分も可愛い子役としっかりしたプロットの中に昇華されている印象を持ちました。クリスマスに「ホームアローン」も見るのもいいかもしれませんが、是非「トムとトーマス」を見てほしい。かわいらしい双子と不器用ながらも愛情あるショーン・ビーンの親子関係はとてもいいし、丁度良くハラハラして、最後は幸せになれる映画です。まぁ、この映画で幸せになったのは双子もだけれど一番はお父さnゲフンゲフン。
(※この映画の10年後、アーロン・ジョンソンはキック・アスになる)











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